雨まちづくり連続セミナー第1回「人と自然をつなぐ―竹中工務店の仕事」を開催しました

「雨まちづくり連続セミナー」は2018年度に4回開催予定です。

第1回は、本NPOの会員でもある(株)竹中工務店の向山氏(設計本部アドバンストデザイン部ランドスケープグループ長)に講師をお願いし、5/26(土)に開催しました。

第一部では向山氏が約1時間にわたり、「人と自然をつなぐ―竹中工務店の仕事」というタイトルで、まちづくりの事例を紹介されました。続く第二部では「雨水トーク」として、向山氏と本NPOの神谷博理事長が参加者からの質問や意見をまじえながら対談を行いました。

向山氏の講演内容は、①まちづくりに関する竹中工務店の紹介、②人と自然をつなぐデザインのヒント、③蓄雨が作り出す環境でした。「人と自然をつなぐデザインのヒント」では、都市再生や快適な空間づくりの事例を紹介し、ユーザー参加、ライフスタイルの変化をもたらす仕組、エビデンスに基づいたデザインの必要性についてお話がありました。

都市再生の事例では、「てんしば」(大阪市)における官民連携による公園づくりと運営管理について報告されました。快適な空間づくりでは、第一生命新大井事務所(神奈川県足柄上郡大井町)における集中とリラックスのリズムづくりに緑化が貢献していることが話されました。また、ユーザー参加では、コイズミ緑橋ビル(大阪市)の光と緑に寄りそう先進ワークプレイス、ならびに石巻門脇地区公園づくりワークショップ(宮城県石巻市)で地域の未来を担う中学生と協業し津波に流された街を復興する活動の例を挙げられました。ライフスタイルの変化をもたらす仕組として「ソトコミ」があり、「ソト」の中から休憩やコミュニケーションに適切な場所を選び、積極的に「ソト」を利用するワークスタイルを示しています。さらに、エビデンスに基づいた環境デザインでは、環境整備による人流の改善の例として、大学内のアスファルト舗装の改修とデッキの新設によりデッキの利用者が約85%増加したことを報告されました。

最後に蓄雨が作り出す環境では、DIC川村記念美術館(千葉県佐倉市)の庭園改修で魅力的な水辺空間の再生がされたことと、日清食品グローバルイノベーション研究センターは雨水を利用した水面に浮かぶ研究所であること、東京都千代田区にある飯野ビルディングは既存緑地と企業緑地をつながる緑のネットワークを構築していることが紹介されました。これらの事例では、多くの写真やパース等が示されました。

さらに、レインスケープの開発・実証と提案では、植栽空間を活用した雨水の貯留・浸透空間の開発を技術研究所で開発・実証中であることにも言及があり、レインスケープやレインガーデンの事例や江東区を中心とした東京イーストベイ構想の提案も紹介いただきました。講演を通して、非常に盛り沢山の竣工物件の写真やパースが示され、緑と水を活用したまちづくりに関する分かり易いお話でした。

第二部の雨水トークでは、第一部で紹介された事例を基に竹中工務店における雨水活用の考え方、顧客とのパートナーシップなど緑と雨水活用の導入についてお話されました。また、プロフェッショナルリスクを回避するために、関係者間のコミュニケーションの重要さやエビデンスや評価の大切さの話も出ました。まちづくりでは、建設時のみでなくその後のメンテナンスが重要であり、ボランティア活動も組み込んで管理作業を計画する必要があります。さらに、アートは建築主によりその重要度が異なり、計画時には各種のアートを盛り込んでいたがその後竣工時までに消えてしまうことも多いとの話もありました。他に、蓄雨の観点からは、雨水の浸透は大きな要素になるが、浸透が難しい地域もあり、雨水貯留槽の建設で対応する場合もあることにも話が及びました。最後にまちづくりの観点からは、「公」と「私」の空間をどの様に確保できるのか、その区分はどの様に考えるのかなどの議論もありました。

今回の雨水トークは“雨水”にこだわったトークではありませんでしたが、緑と水を活用したまちづくりの観点から幅広い対談になりました。

(文:小川幸正理事)